第5回 神奈川MRI技術研究会


企画2 特別講演
関節MRIのコツ:そのやり方で大丈夫ですか?
(広報担当 佐藤によるレポート)
首都大東京 健康福祉学部    新津 守先生


平成19223日(金)にかながわ県民センターに於いて、第5回神奈川MRI技術研究会が開催され、膝関節をはじめ関節のMRIにてご高名な首都大学東京 新津守先生をお招きして、「関節MRI:そのやり方で大丈夫ですか?」をテーマにご講演いただきました。今回は広報担当 北里大学医療衛生学部 佐藤がレポートしていきます。

特別講演で私が注目したことの一つは、撮像断面の決定方法です。当院(北里大学病院)では、前十字靱帯描出を目的とした膝関節の矢状断面を横断像・冠状断像から前十字靱帯の角度(外顆内側面)に合わせるように決定していましたが、無理に前十字靱帯の角度に合わせる必要はなく、自然な角度が良いと先生はご提示されていました。前十字靱帯を1断面ではなく、複数断面の画像から十分に診断できるからという理由でした。これは装置の高性能化によりスライス厚を薄く撮像できるようになったことも大きく貢献しているようです。今後、撮像の3D化・高空間分解能化に伴い、撮像断面に対する考え方も変わっていくのかもしれません。

足関節では、受信コイルの形状や被検者の状態などにより足関節の角度が検査の度に異なります。横断像を撮像したつもりが冠状断像のような画像になったりして、撮像された断面の判別に困る症例がよくありました。横断像を後距骨下関節の内側よりの一番傾斜の無い平面に平行な断面を基準にすることで、再現性のある横断像を得ることができるそうです。

関節MRIの撮像断面は足関節に限らず、施設により異なるとは思いますが、教科書によっても微妙に違いがあり、曖昧なところがあるのが現状だと思います。このように明確な撮像断面が決定されれば、施設間による差・操作者による差・被検者による差などが減少し、再現性のある検査を実施できるという点で非常に有用であると思いました。

注目したことの二つ目は、マイクロスコピーコイルを使用する検査の固定方法と患者接遇の方法です。マイクロスコピーコイルは動きに弱く、固定方法も非常に難しいと思います。例えば肘では、左右から受信コイルで撮像部位を挟み込み、輪ゴムで直接固定するという方法が紹介されました。輪ゴムで固定することにより、患部と受信コイルの位置の修正を行うのが容易になるという理由でした。

患者接遇では、検査前に十分なインフォームドコンセントを本人が納得するまで行うことにより検査をスムーズに進められるということ、また具体的なインフォームドコンセントのコツを教えていただきました。これらはMRI検査全般に言えることで、私は非常に重要なことだと思っています。検査時間は限られており、時間を無駄にしないための努力がいかに重要であるかを再確認することができました。

その他に全般的事項として、靭帯や半月板などの描出を目的とした関節MRIでは「MRIT1WIT2WIから」という従来の概念を捨て、T1強調よりもプロトンに近い中間的な画像の方が良いコントラストがつくという理由でPDWIT2*WIを主体としたプロトコルのご提示がありました。ご施設のプロトコルを再考する良い機会になったのではないでしょうか。

先生には、関節MRI検査における検査前準備の重要性や注意事項をはじめ、膝関節以外の肩関節・股関節・足関節・手関節・肘関節・顎関節の撮像ポイント(撮像体位/コイルの選択/撮像断面/撮像法/撮像パラメータ等)を明確に、かつ詳細にご教授していただきました。実際に臨床で実践されている撮像体位、コイルの選択や固定方法等の写真や図を用いたプレゼンテーションは視覚的にも理解しやすく、明日からすぐにでも始められるような非常に参考になるご講演でした。いろいろな疑問を解決する大きなヒントを得ることができた方も多かったのではないかと思います。

撮像体位の工夫、受信コイルの選択やセッティング、撮像条件や撮像断面の決定等は診療放射線技師業務にとっての醍醐味であり、関節MRI検査はその力を発揮できる分野の一つであることを実感しました。何気ない小さなことが、実は非常に重要な意味を持っていることを再認識することができました。

最後に、ご講演いただきました新津守先生に謝意を申し上げます。

(文責:北里大学 医療衛生学部 佐藤英介)



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