第11回 神奈川MRI技術研究会



 平成2126日(金)に横浜市社会福祉センターに於いて,第11回神奈川MRI技術研究会が開催されました.企画1では,岐阜大学医学部附属病院の梶田先生に『Gd-EOB-DTPAにおける撮像技術-注入方法の考え方から撮像Tips-』と題してGd-EOB-DTPAを用いた撮像技術関してご講演いただきました.企画2では,北里大学の松永先生に『EOBを上手に読むコツ』と題して臨床におけるEOBの独英方法に関してご講演いただきました.今回の内容報告は第1部の内容を横浜栄共済病院の高橋先生,第2部の内容を北里大学病院の尾崎先生に座長集約をお願いいたしました.

【企画1:Gd-EOB-DTPAにおける撮像技術-注入方法の考え方から撮像Tips-】

演者:岐阜大学医学部附属病院 放射線部 梶田 公博 先生

 第11回神奈川MRI技術研究会の報告をさせていただきます.司会の冒頭で述べましたように,EOB・プリモビストが発売されてから丁度1年ということで,造影剤の注入方法,臨床での問題点,撮像手順やSTUDYプロトコールはどうなっているのか?等は多くのユーザが大変疑問に思っていることだと思います.昨年行われた研究会世話人会でEOB・プリモビストの現状について,少しでもユーザの参考になるようにということで特集を組むことになりました.昨年の日本磁気共鳴医学会で岐阜大学 梶田先生が様々な造影剤注入法を検討しておられましたので,今回御講演していただく運びとなりました.岐阜大学というと,昨年の神奈川Imaging Nowで御講演していただきました兼松先生が御高名です.梶田先生のお話を通して兼松先生が考えるEOB・プリモビスト STUDYも学ぶことが可能であると考えました.皆様いかがだったでしょうか?金曜日の午後という時間にもかかわらず,参加者は総勢80名となりました.EOB・プリモビストの関心の高さが伺えると考えています.
 岐阜大学では肝臓のStudyは全て3T装置で行っているということでした.使用装置はフィリップス社製,シーケンスはeTHRIVEを用いていました.先生の御講演はdynamic MRIにおける造影剤注入法と最適撮像法を中心とした内容でした.EOBGdと比較して,T1短縮効果が強く,それ故に造影剤の投与量はGdの半分になっており,MRIの特性に合わせてうまくBolus注入する工夫が必要であるとのことでした. MR装置で撮像した場合,Gdの信号強度が比例関係でないことから,実験系ではCTを用いTDCを解析していました.造影剤到達時刻(Time to peak),最大CT値,FWHM,排出率の4項目に関して検討されていました.実験では,生食の注入方法を同じにして造影剤の注入rateを変化させた場合,造影剤の到達時刻のみが変化したということでした.上記に追加して,生食のrateを変化させるとFWHMが変化したということでした.TDCをより山形にするためには,後押し生食の注入rateを高くするということでした.後押し生食の量を変化すると排出率が変化するということでしたが,臨床では差が生じないということでした(Aortaでの信号強度解析).造影剤を注入rate=2cc/s以上で注入すると,back flowして生食と造影剤が混じり合うということでした.造影剤の注入とK空間フィルターの関係では,投与方法によってはK空間の中心で造影剤が到達せず,Truncation Artifactが出る可能性についても言及されていました.ここの話は大変重要であり,Bolusに注入しても駄目ということになります.したがって,Bolus trackingは必須であると感じました.また,専用の逆流防止弁を購入しないことを考えると,注入rate=2cc/sが良いと感じました.次に,T2強調画像ですが,造影剤注入前後(後は8分後の撮影)で統計学的優位差は出なかったということでした.拡散強調画像でもT2強調画像と同様に,投与後でも大丈夫ということでした.岐阜大学では,MR透視にて造影剤の到達を確認し,10-12秒後にてdouble arterial phaseで撮像しているということでした.神奈川のGEユーザで作るUMにおいてもSmart Prepにて造影剤を自動感知してから12秒後に撮像を開始することになっており,同様の方法で安心しました.質疑において,横浜栄共済病院 谷先生から造影剤の注入方法とHCCの描出能に関して質問がなされましたが,今後の検討課題ということでした.この部分は私個人も大変興味があり,今後の研究成果が楽しみでもあります.)

(文責:横浜栄共済病院 高橋 光幸)

【企画2:EOBを上手に読むコツ】

 演者:北里大学 医学部 放射線科 松永 敬二 先生  

 11回神奈川MRI技術研究会 第二部の報告をさせていただきます.第一部では,岐阜大学 梶田先生に技師の立場からEOB・プリモビストの造影剤注入法について詳しく御講演いただきました.第二部では,北里大学 医学部 放射線科 松永敬二先生に『EOBを上手に読むコツ』というお題でclinicalなお話をしていただきました.松永先生が現在ご勤務されている北里大学東病院は肝臓疾患に関してかなりの症例数を持っており,EOB・プリモビストに関してもかなりのご経験がおありということで,今回御講演していただく運びとなりました.
 御講演の内容に関してですが,北里大学東病院,北里大学病院のEOB・プリモビストのプロトコルの紹介,HCCを中心とする症例提示,EOB・プリモビストの今後(肝臓領域の画像診断においてどのような位置づけになっていくのか)等について詳細にお話していただきました.北里大学東病院,北里大学病院ともに,造影前にT1WI(In phase/opposed phase)を撮像し,続けてdynamic studyT2WIDWI,肝細胞相と撮像していくのですが,違う点は北里大学東病院が固定法を採用しているのに対し,北里大学病院ではsmart prepを採用している点でした.両病院の画像を読影されている松永先生にどちらの造影タイミングが安定していますか?とお聞きしたところ,どちらも比較的良好なタイミングで撮像されているとのことでした.Dynamic studyの撮像タイミングの取り方は第一部の梶田先生の御講演にもあったように,今後もいろいろと議論されていくものと思います.今後の学会等の報告に期待したいところです.症例に関してはHCCの症例が非常に多く,そして何より関心を持ったのは肝細胞相でEOB・プリモビストが取り込まれる症例が非常に多い点でした.現在の知見では,EOB・プリモビストが取り込まれるHCCGreen Hepatomaではないか?というのが一般的だと思うのですが,松永先生のお話では胆汁排泄能の落ちているHCCではGreen HepatomaでなくてもEOB・プリモビストが取り込まれているのではないかと推測されていました.肝臓疾患は病理との比較が非常に難しく,evidenceを作りにくい領域であり,この点に関しても今後の学会等での報告に期待したいところです.また,Cystの症例においてdynamicで辺縁が染まっている症例があり,これはartifactなのか?それともCystの周りにAP shunt等の血流異常があるのか?というご提示がありました.なかなか判断の難しいところですが,私個人としてはAP shuntが存在するのではと感じましたが,皆様はこのようなご経験はおありでしょうか?最後に,EOB・プリモビストの肝臓領域の画像診断の中での位置づけについてです.松永先生は当初,Dynamic study(形態検査)+おまけで肝細胞相(機能検査)という感覚で使用していく考え方のようでしたが,使用していくにつれてメインで肝細胞相(機能検査)Dynamic study(形態検査)という考え方に変わってきたそうです.今後は,機能検査がSPIO・リゾビストからEOB・プリモビストに移行していくことは間違いないだろうとのことでした.また,RFA(Radio Frequency Ablation)の治療評価に関しても比較・検討されているようです.今後の報告に期待したいところです.
 肝臓領域の画像診断は個人的に興味を持っている領域であったため,今回の神奈川MRI技術研究会はいつにも増して非常に楽しく,あっという間に終わってしまいました.今後のEOB・プリモビストの研究成果などに期待したいところです.

(文責:北里大学病院 尾崎 正則)



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